これは昔の話。一緒に働いてくれる象を探しに 市場に出かけた象使いは、見たことのない緑色の象に出会った。
その象はたいへん頭が良く、象使いの言うことをよく聞き、象使いのすることをよく見て覚え、決して忘れなかった。
象使いは緑の象をとても気に入り、いつも一緒にいて、いろいろなことを教えて、時には象に忘れていたことを思い出させてもらった。
象使いは一生の相棒を見つけたように嬉しくて喜んでいた。
ある日、天から「あなたの宝を捧げれば、その象は今まで以上に働いてくれますよ」と優しい声が聞こえてきた。
しかし象使いは今の象の働きで満足していたので、聞く耳を持たずに過ごしていた。
緑の象に出会ってどのくらいの月日が経ったのだろうか?
突然、緑の象は言うことを聞かなくなった。
教えたことは覚えているようだが、新しいことは何ひとつ覚えようとしない。
これでは使いものにならない。
象使いは困ってしまった。
新しい象を探そうにも、同じくらい働き者の象に出会えるかわからない。
出会えたとしても、また最初から教え込まないといけない。
悩みに悩んだ象使いは仕事も上の空で、夜も眠れなくなった。
そんなとき、ふと天の声に耳を傾けると「その象は疲れています。あなたの宝を捧げれば、今まで以上に働いてくれますよ」と以前と同じ優しい声が聞こえていた。
言われるままに天に宝を捧げたところ、たちまち緑の象は、元気を取り戻し 今まで以上に働くようになった。
これには象使いもホッとひと息。悩みも消えて心穏やかに過ごせるようになったそうな。
でも、象使いは知っていたのです。
しばらくすると また象が動かなくなって、ふたたび宝を捧げないといけないことを…。
それが象使いの新たな悩みになったとさ。